2020年11月に2度目の選挙を実施した所謂「大阪都構想」は僅差の否決となったものの、大都市制度のあり方に一石を投じたという点でとても意義深かったといえる。実際政令市を中心に統治機構改革の議論が巻き起こっており、本日紹介する「特別自治市構想」もその一つである。(※以下特別市と表記)
特別市制度は政令市を都道府県から完全に独立させて、より自由な自治を可能にする。
では「特別市」は現在の政令市制度が抱える課題を解決できる制度なのだろうか?今回は政令市制度が抱える2つの課題”二重行政”と”部分最適”に着目して評価したい。
二重行政問題は解決できない
課題のうち前者にあたる”二重行政”は全ての、都道府県と政令市が重複した権限を持つことによって、重複した組織やサービスを保有し、コストパフォーマンスが悪くなることを指す。「大阪府立大学」と「大阪市立大学」や「大阪府港湾局」と「大阪市港湾局」はこの好例だろう。
では特別市制度ではどうなるだろうか?結論から言うと二重行政問題は解消されない。特別市は差し詰め”市の道府県からの独立”であり、市と道府県が重複した組織を保持することには変わらない。そのため規模の経済が働きにくく、低コストパフォーマンスな状態は変化しないと考えられる。
部分最適問題は寧ろ悪化する
部分最適とは組織が自部門のみの利益を最大化することを追求することで、結果として全体最適の状態を棄損することを指す。大阪であれば、市内交通のみを考え都市圏全体の交通を考慮してこなかった市営地下鉄の”市営モンロー主義”が代表例だろう。
この問題については、特別市導入によってむしろ悪化すると考える。都道府県の干渉が無くなり市の独立性が高まることで、他自治体を考慮する必要性が低減されるからだ。
まとめ(特別市制度は政令市制度が抱える問題を解決しない)
よって特別市制度は都構想のように政令市制度が抱える課題の問題解決案にはならない。特別自治市に移行したいのであれば、都市圏全体か府県全域をカバーする規模にするために、まずは市域の拡張を目指したらどうだろうか?