枝見的考察記

社会/地域/経済の出来事を斜めの視点から描きます。

なぜ京都市の財政は火の車なのか?【税収?支出?】

「京都市がこのままだと2026年に破綻する・・」一斉に各紙が報じたこのニュースは寝耳に水な人も多かったかもしれない。しかしなぜ、これほどまでに収支が悪化したのか?危機的な収支状況が放置されていたのか?理由については不明瞭なところも多い。
news.yahoo.co.jp

引用元の記事では

・支出面

 地下鉄東西線の建設費償還

・収入面

 学生の街で住民税が期待できない

 神社仏閣からの固定資産税が得られない

等が原因だと挙げられている。

 

 

 

他にも

・外郭団体への天下りや高水準な公務員給与

・財政規律の甘さ(市役所建て替え/住民サービス)

などなど様々な理由がささやかれている。

 

そこで今回は同規模の他政令市と比べて、京都の財政にはどのような特徴があるか見ていきたい。

京都/神戸/福岡/仙台/札幌五都市比較

収入面

まず収入面から5都市を比較する。(データはいずれもH30orR1)

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このデータを見る限り京都市が税収水準は福岡と同程度で、仙台を上回っており京都市のみが税収面で不利であるとの見立ては少し無理がありそうだ。

 

支出面

次に支出面から比較してみる

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こちらを見ても京都市が取り立てて悪いようには見えない。では一体なにが京都の財政を圧迫しているのか。

 

 

 

京都市の財政赤字は慢性的なものではなく突発的なものでは?

ここまで京都市と他政令市を比較してきたが、京都市のみ財政状態が悪い理由が見えてこなかった。そこで京都市は急激に財政規律が悪化したのではないかと考えた。

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毎日新聞より引用

このグラフを見てもらうと公債償還基金は2020まで繰り入れ>繰り出しを維持して積み上げてきている。悪化したのは2021年以降で、コロナ禍による税収減+補助金支出の増加による財政収支の悪化が見てとれる。

 

臨財債が機動的な財政運営の重しに

もう一つ京都市の財政規律を損ねているのが臨時財政対策債(臨財債)の存在だ。臨財債は本来国が交付する地方交付税交付金の原資が足りない場合、国に代わって自治体が地方債を発行する、つまり国の借金の肩代わり制度だ(勿論最終的な償還責任は国にある)。

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上記京都市公開資料を見ると臨財債を除く市債残高は減少傾向にあり、京都市の財政収支は改善している。

 

 

 

まとめ

・京都市の歳出/歳入は他都市と比較しても遜色ない

・臨財債引き受けが財政の重しに

・そこにコロナショックが到来し財政規律が毀損

 

さいごに

まずは臨財債という国の財政の禁じ手について、同種の現象は京都だけでなく地方交付税交付金を受け取る各自治体に起きている。国がこうした”財政の禁じ手”を使っているのを放念して京都市を批判するのは少し酷な気がする。

 

また京都市の歳出入水準が適性だと述べたが、京都市にも取り組むべきことは沢山ある。例えば市役所増築+建て替えの延期は必須だろうし、観光業に依存していた産業構造も見直さなければならないだろう。