大阪都構想否決から1ヶ月が経過した。
2020年11月1日、維新にとっては悪夢の一日となった。事前の世論調査では賛成多数となっていたにも関わらず、土壇場で賛否は入れ替わり宿願の都構想が否決された。2015年の住民投票同様に僅差の否決となったことから、民主主義の怖さを改めて実感させられる結果となった。
また選挙期間中の賛成派反対派の主張や、新聞の記事でも”フェイクニュース”が飛び交い直接民主制の限界を露呈したとも思える。
選挙は終わったが健全な民主主義のためにファクトチェックは重要だ。
そこで今回は以下の発言のファクトチェックを行いたいと思う。
経緯を説明すると、山本太郎氏は大阪都構想に反対の立場から来阪し、街宣活動を精力的に行った。彼の主張のキーポイントはズバリ”大阪は成長していない”という点だ。
本当?
多くの大阪人はこの主張に違和感を持っただろう。大阪に住んでると「維新政治になって良かった」という話をよく聞く。10年の維新政治の中で、街並みは綺麗になり、活気も増えたように感じるからだ。なぜ実感と数字がズレるのかも踏まえてみていきたい。
都市成長の物差しはヒト/モノ/カネ
都市とはヒト/モノ/カネが集まるところを指す。しかしモノは適切な指標がないので、今回はヒトとカネの2点から都市成長の真偽を調査する。
ヒトは成長
ヒトの成長を判断するうえで最もわかりやすい指標は”転入超過数”だ。”転入超過数”は転入数-転出数、つまり人が都市に集まってくるか出ていくかの指標となる。
上図をご覧いただくと、大阪市/大阪府/大阪圏の3指標で上昇基調が続いていることがわかる。転入超過は外から人が集まる魅力があるということなので、それだけ大阪の魅力が高まっているということになる。
ただし留意点も必要で、2002-2008には既に上昇基調にフレており、直近の好成績が維新政治の効果かどうかは判別できない。しかし山本氏の主張する”大阪は低迷している”主張の反証にはなると考える。
カネはどうなの?
カネの最適な指標は経済成長率だろう。
2002-2017までの大阪府と全国の名目経済成長率を比較すると、やはり全国のほうが経済成長しているように見える。やはり維新政治で大阪は衰退したのか?
統計では差の差分析を用いるべし
しかし絶対評価で決めてしまうのは早計だ。例えば日本の経済成長率が中国より低いからアベノミクスは失敗だと決めつけることはできない。
この場合では維新が政権を取る前と取る後で、大阪と全国の成長率がどう変わったかを比較することが有効な手法である。
上図を見ると政権を取る前の2002-2006(リーマンショック期間を除く)と政権を取った後の2010-2017で、全国と大阪の経済成長率の差は微減しており、維新政治で大阪が停滞しているという主張は棄却されることがわかる。
大阪人が持った違和感は正しかった
大阪は2002-2006の小泉景気時に全く恩恵に預かれずマイナス成長しているのに対し、2010-2017のアベノミクスではある程度の成長をしているので、大阪人の感覚として”昔よりよくなっている”と感じるのは当然のことであり、山本氏の主張はズレていると言わざるを得ないだろう。