枝見的考察記

社会/地域/経済の出来事を斜めの視点から描きます。

”副首都構想”に求められる役割と候補となる都市

高市内閣が10月21日に発足しました。ぎりぎりまで各党の駆け引きが続きましたが、結果的には自民党と日本維新の会の連立政権が成立したかたちになります。自民党との連立にあたり日本維新の会は12項目の条件を提示していますが、その中に「”副首都構想”の推進」があります。

 

”副首都”のキーワードがにわかに取り沙汰された影響で、「副首都を置くなら〇〇」と様々な意見が政治家や有権者から発信され、SNSでも目にしない日が来ない時期もありました。

 

しかし”副首都”とは何か、定義や求められる役割が定められぬまま候補地の議論をしても意味がありません。今日は”副首都”の要件と候補となりうる都市について考察してみます。

 

副首都の定義

2025年参議院選挙での日本維新の会の公約には”副首都”についてこのように書かれています。

「中央集権体制と東京一極集中を打破し、地方分権・多極型の国家構造を実現します。そのための第1歩として、災害等の発生時に首都中枢機能を代替できる「副首都」をつくり、中央省庁をはじめとした首都機能の一部を移転することで、東京一極集中から段階的に多極型の日本社会へと移行を目指します。副首都は首都中枢機能の代替のみならず、経済基盤強化、事業の高度化・生産性向上・新規創造、人材育成・確保、子育て環境整備、地方分権等を促進する拠点化し、東京圏と並びわが国の経済成長を牽引します。」

 

また高市総理の所信表明演説でもこのように”副首都”について言及されています。

首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散及び多極分散型経済圏を形成する観点から、首都及び副首都の責務と機能に関する検討を急ぎます。

国会で副首都構想の議論がはじまります

副首都の要件

上記の文章を見ると、これら3つの要件が含まれていることがわかります

  1. 平時から首都機能の一部を担う
  2. 有事の際に首都機能を代替する
  3. 首都圏に並ぶ強い経済圏になる

このうち①「平時から首都機能の一部を担う」の一部は具体的にどの機能を指すかは、これから検討するとのことです。仮に外交機能を含むのであれば国際空港や領事館の集積、迎賓館や一流ホテルの整備が必須になりますし、金融・証券機能を含むのであれば民間金融機関のバックアップ拠点との近さやデータセンターの集積度合いが重要なファクターになります。

 

候補都市について

以上の定義をもとに、どの都市がどの程度要件を満たすのかを整理してみました。

札幌

札幌は新千歳空港の利便性が高く開発用地も容易に確保できる一方で、豪雪災害や国防のリスクを抱えています。また都市圏人口が200万人ほどと小さいため強い経済圏をつくるハードルが高いです。

 

仙台

仙台は東京から新幹線で2時間圏内とアクセスが良く、民間企業のバックオフィスも集積しているため一定程度首都機能をバックアップできると考えられます。しかし東日本大震災では東京と同時に被災し、津波で仙台空港が冠水したことからも有事拠点としては脆弱性があると考えられます。

 

名古屋

名古屋は仙台同様に東京からの新幹線アクセスが良いメリットがありますが、南海トラフの地震のリスクが高いデメリットがあります。また新幹線は有事の際に復旧まで時間を要することからも有事拠点としての脆弱性が認められます。

 

大阪

大阪は圏域に3つの空港があるうえ、外交機能(迎賓館・総領事館)や経済機能(在京企業のバックアップ拠点)などが充実しており少ない投資額で首都機能代替のインフラを整備できることが魅力です。ただ開発用地が限られること、南海トラフのリスクがあることから関西全体で候補地を選定する必要があります。

 

福岡

福岡は空港利便性が高いうえに被災リスクが小さく、一定の経済規模を抱えていることから総合的に欠点のない候補と言えます。

 

総評:結局何を求められるかで変わる

結論として副首都に何を求められるかでふさわしい都市が変わってきます。平時からの首都機能分散という視点なら大阪が最も適していますが、有事バックアップの観点だけだと福岡も候補の俎上にあがってきます。まずは副首都に求められる要件を煮詰めることが議論を始めるのが肝要です。