枝見的考察記

社会/地域/経済の出来事を斜めの視点から描きます。

【MBAホルダが考える】玉出の高級スーパーが失敗した2つの理由

「日本屈指の高級住宅地”芦屋”に玉出の高級スーパーが出来る」関西メディアが報じたのは昨年のことでした。”格安”と”ド派手な看板”が全国的にも有名なスーパー玉出が高級スーパーを展開することに驚きをもった方も多いのではないでしょうか?

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しかしそこから僅か1年足らずで臨時休業に追い込まれ、既に半年以上休業の状態が続いています。

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ではなぜ玉出の高級スーパー「F.F.マルシェ芦屋」は通用しなかったのか、今回はオペレーション能力、出店戦略の視点から要因を考えていきたいと思います。

 

オペレーション能力の問題

まず一つ目の要因として、そもそも玉出に高級スーパーのオペレーション能力が無かったことが考えられます。これは別に玉出の能力が劣っているというわけではなく、高級スーパーをオペレートするにはそれに適した組織や人材が必要になるということです。

高級スーパーの場合は商品の目利き力や顧客が快適に滞在できる環境づくりが求められますが、低価格スーパーの場合は仕入れの価格交渉力や、床当たりの陳列を高めてコストを抑えることが求められます。成功要因が異なるために玉出で培ったノウハウを活用できなかったわけです。

高級スーパーと格安スーパーでは成功要因が大きく異なる

このためビジネスモデルの水平展開は隣の領域から攻めるのが王道です。たとえば百貨店の高島屋は近年、よりカジュアルな高島屋S.C.を展開していますが、通常のSCに比べ高価格帯のテナント構成となっており、百貨店の強みやノウハウを活かせる領域で勝負していると推察できます。

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出店戦略の問題

次に出店戦略の問題を考えてみます。「高級住宅地芦屋に出店するのは当然では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、果たして正しい選択だったのでしょうか?現在芦屋市内には以下6店の高級スーパーが林立しています。

イカリスーパー (2店舗)

明治屋

成城石井

パントリー

ビッグビーンズ

 

人口10万人足らずの都市としては尋常でない集積度合いです。それだけ多くの富裕層がいることの証左ですが、激しい競争に巻き込まれることに違いありません。

新参者のF.F.マルシェがレッドオーシャンの市場に参入して、いかりスーパーやパントリーから顧客を奪えるでしょうか?このあたりに出店戦略の失敗があったのではないかと思います。

 

 

 

ライバルがカバーしていないところを狙うのが吉

出店戦略では、ライバルがいないエリアを狙うことが良いとされています。筆者が過去に住んでいた生駒市で"KOHYO"が見事な出店戦略をおこなった事例があるので紹介したいと思います。

まず背景情報として生駒市は人口12万人ほどで芦屋市と、平均所得は宝塚市や豊中市と似た水準となっています。食料品店を見てみると生駒駅の近鉄百貨店(+成城石井)に加えてmandai・KINSHO・オークワなどがあります。

生駒のライバル店舗の構成とKOHYOのポジショニング

ライバル店舗に中価格帯でお洒落な店舗がないことから、生駒のKOHYOは輸入菓子や洋酒コーナーが広い構成になっています。これはSTP分析→出店につなげる好例だと考えます。

 

 

 

さいごに

今回はオペレーション能力・出店戦略の観点から要因を分析しました。内情を知っているわけではないのであくまで推測です。個人的には芦屋ではなく堀江や学園前に出店していればもう少しやれたのではないかと思っているのですが、どうなんでしょう?いずれにしてもここからの再起に期待したいです。