大阪府は2025年の関西万博に向けて、都心部と夢洲を船で結ぶ水上ルートを構築するために、大阪市西区に「中之島GATE」と呼ばれる船着き場を設置することを発表しました。
NHKの記事によりますと、夢洲や神戸空港などからやってくる大型船と道頓堀などを周遊する小型船の乗り換え地点として整備するそうです。
万博会場への輸送ルートとして機能するか?
では新たな船着き場の設定は万博へのアクセスルートにどのように寄与するのか、本当に機能するのか①輸送能力と②アクセス性の観点から評価しました。
①輸送能力の観点から
まず輸送能力の観点からみていきます。船の運航頻度はあまり勘所がありませんが、1スポットで1つの船を捌くのに15分かかると仮定します(客の乗降や入出船など)。仮に1つの船の定員が100人で2スポット整備したとすると、一時間に輸送できる人員は800人となります。これは大阪メトロ中央線の1編成6両分に相当します。
輸送能力は大阪メトロの5~10%ほどか
上記より船での輸送はマクロ環境に大きなインパクトを与えないと考えられます。船を活用する事例は東京オリンピックでも見られましたが、鉄道が発達した今日では運河の輸送能力は鉄道に及ぶべくもありません。
②アクセス性の観点から
もう一つ本プロジェクトが抱えている懸念事項がアクセス性です。船着き場が整備される場所は最寄り駅の阿波座から徒歩15分ほどかかります。また阿波座⇔船着き場のルートは特に整備されているわけではなく、雑居ビル群の中を抜けていくイメージとなります。実際は阿波座からは大阪メトロでダイレクトに夢洲にアクセスできるので、阿波座から歩いて船着き場に向かう人は少ないでしょう。道頓堀や天満橋・大阪城方面から船でアクセスする人が多いと考えられます。
結論
以上輸送能力とアクセス性の観点から船着き場の有効性を検証してみました。正直船着き場の整備によって万博輸送が劇的に改善されることは無いと考えます。アクセスルートの選択肢にマクロ的なインパクトをもたらす可能性もほとんどありません。
しかし整備費用が5.4億円と過少であることを鑑みれば能力に限界があるのは当然と言えます。また大阪城や道頓堀といった観光地と夢洲を結ぶ水上ルートの構築ができることは観光資源的な価値向上をもたらす可能性があります。
船着き場の整備によって水都大阪のプレゼンスが向上することを期待します。